解剖室の天井板に現れた血の手形
どんな伝承か
天井の怪物の例として、京都市のある病院の話も挙げられている。その病院の解剖室で、あるときひと晩のうちに、天井板の何か所にも血で押したような手の形が現れた。人々は妖怪の仕業のように言いはやしたが、著者は、だれかが人の手でしたことに違いないと断じている。経験が乏しいために、ありふれたことにまで妖怪を持ち出してしまう例の一つである。
原典より
京都市の病院の解剖室に、ある時一夜の中に天井板に手の形を血にて印したるもの数ヶ所に見えしより、妖怪の所為のごとく申せしも、何人かの所為に相違ない。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。