榛名神社に合格を祈る法科大学卒業生
どんな伝承か
著者はかつて上州の榛名山に登り、榛名神社に参拝した。そこで耳にしたところでは、法科大学を出た若者たちが毎年、文官試験の勉強をするために榛名の町へ大勢やって来て下宿するが、そのうちには神社に合格を祈る者がかなり多いという。著者はこれを、知識が進んでも運命に迷う心は消えないことの一例として挙げる。試験の合否がかかる場面でさえそうなのだから、生きるか死ぬかの大事に直面すれば、人は自分の力の小ささを思い知って運命にすがり、学問のある者でも多少の迷信を起こすのだと論じ、そこから宗教の役目へと話を進めている。
原典より
その時聞くに、毎年法科大学卒業生が文官試験の準備のためとて榛名の町に多数下宿するが、その中には神社に試験の合格を祈願するものがずいぶんあるそうだ。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。