種水を注いで雨を乞う農民たち
どんな伝承か
都心から一時間半の東京都下小平町野中新田は、何千人ものサラリーマンが暮らし、ブリヂストンの大工場や津田塾大学もある町だが、地付きの畑作農家もまだ少なくなかった。その日、武蔵野神社の境内には二百余人の農民が集まり、仮設の祭壇のわきに置いた大きなたらいへ、奥多摩の御岳神社の七代ノ滝から持ち帰った神水を種水として注いだ。陸稲もトマトもキュウリも青菜までも栄えさせ給え――神官が祝詞を捧げ、太鼓を叩きながら人々は雨を乞い祈った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。