種水を注いで雨を乞う農民たち
どんな伝承か
都心から一時間半の東京都下小平町野中新田は、何千人ものサラリーマンが暮らし、ブリヂストンの大工場や津田塾大学もある町だが、地付きの畑作農家もまだ少なくなかった。その日、武蔵野神社の境内には二百余人の農民が集まり、仮設の祭壇のわきに置いた大きなたらいへ、奥多摩の御岳神社の七代ノ滝から持ち帰った神水を種水として注いだ。陸稲もトマトもキュウリも青菜までも栄えさせ給え――神官が祝詞を捧げ、太鼓を叩きながら人々は雨を乞い祈った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・今野圓輔・民俗学・昭和(高度成長期))
民俗学者・今野圓輔が高度成長期の日本に残る迷信を社会派ルポとして告発・分析した一冊。序章では、静岡県掛川市で異性双生児を畜生腹と恥じた母親の母子心中事件、青森県三本木市でキツネ落としと称して女を火あぶりにした殺人事件など、迷信が現代も殺人・心中を生む『黒い習俗』を突きつける。