丙午を恐れ高騰した赤蛙と蝮
どんな伝承か
丙午生まれの女を忌む俗信は明治三九年の丙午まで尾を引いた。当時の東京日日新聞は、その年が丙午だというので出産を恐れる者が多く、赤蛙と縞蛇と蝮の三種を製薬調合して服せば懐胎しないと言い触らす者まで現れたため、これらの虫類の値が高騰したと報じている。記事は下谷万年町の赤蛙屋の談として驚くべき高値の相場を並べ、蝮と縞蛇は秩父産を主とし、その他は行徳付近から捕えてくるものだと伝える。医科大学や理科大学が解剖用に買い上げる分も少なくないという。
原典より
当年は丙午といふを以て、例の迷信より出産を懼るる者多く、其呪ひには赤蛙と織蛇と蝮の三種を製薬調合して服すれば懐胎せずと言触す者さへ出来りしかば…—— 現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。