丙午を苦にした二人の高島田の心中
どんな伝承か
丙午の年に生まれた女は嫁ぎにくいという言い伝えが、実際に人の命を奪った。昭和三年の正月、東京の品川海岸で、文金高島田に装った二十二歳の女二人が、胴を昼夜帯で結び合わせたまま海へ身を投げた。ひとりは荏原に住む女給の鈴木つる、もうひとりは目の見えない按摩の室田たみである。二人とも明治三十九年の丙午生まれで、結婚もできない身の上を思いつめたと書き残していた。新聞は丙午生まれの悩みと見出しを打っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。