遺伝の誤解が招いた一家心中
どんな伝承か
癩病は感染はするが遺伝はしないというのが専門家の常識だが、一般には遺伝説が根強い。つい先ごろ、東京都北区の官吏だった人が、病院の血液検査で癩病だと誤解し、妻と七歳・三歳・生後五か月の三人の子を殺したうえ、自らも自殺を図った事件があった。子にも遺伝しているだろうから、生きて生涯苦しみ子孫にまで嘆きをかけるよりは、いっそ殺すのが親の慈悲だと決心したことは、何通も残した遺書で明白だった。しかも癩病というのは本人の思い違いだったらしく、まったく気の毒な悲劇だった。
原典より
ついさきごろ、東京都北区の官吏だった人が、病院の血液検査で癩病だと誤解し、奥さんと七歳、三歳に生後五ヵ月と三人の子の四人を殺したうえ自分も自殺をはかった事件があった。—— 現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。