正月二日に一年神主を引き継ぐ軍場神社
どんな伝承か
種子島の西之表市軍場には、古い姿を残す軍場神社がある。拝殿の裏の沢を越えた森の奥に、アコウの大木の根に抱かれるように奥宮があり、珊瑚石を積んだ祭壇に海砂を敷いて二つの祠を祀る。五十数軒の軍場では、戸主が年の順に一年交替でカンヌシ(神主)を務め、毎月十五日と三十日に社を掃除する。奥宮はカミヤマと呼ばれ、神主と氏子総代の三人のほかは誰も入れない。神主の引き継ぎは昔から正月二日で、前年の神主が水をかぶって身を清め、新しい神主を奥宮へ導いて参り方を教える。かつては系図を新しい神主の家へ送り届け、双方で酒宴を開いたという。
原典より
軍場は五十六、七軒ほどで、戸主が年長順にカンヌシ(神主)になって神社の世話に当たる。—— 厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年))
『厄除け――日本人の霊魂観』は、佐々木勝が昭和六十三年に名著出版から刊行した民俗信仰の論考集である。鬼・悪魔・疱瘡神・一つ目小僧など人に災いをもたらす神霊を「厄神」と総称し、その来訪を防ぐ呪術と祀り上げる祭祀を、著者の民俗調査と国学院大学民俗学研究会の採訪記録などの事例から説く。禁忌と呪術、百鬼夜行と目籠、鬼の宿と笹神様、年神とミタマの飯、厄年と年祝い、正月行事と司祭者など八章からなり、うち四章は書き下ろしである。