人目を避けて曼陀羅を送るベンザシの引き継ぎ
どんな伝承か
種子島西之表市の住吉は沿岸漁業の土地で、正月元日にベンザシ(弁済使)の家を宿として船祝いが行われる。ベンザシは漁や浦の神事を取り仕切る一年交替の浦役である。その引き継ぎは大晦日の夜中に行われ、五百年ほど前に法華宗の日隆上人が書いたと伝わる曼陀羅が受け渡される。前年のベンザシの家を送りの宮、新しいベンザシの家を迎えの宮と呼び、ごく限られた者だけで運ぶ。曼陀羅の送り迎えは人に見られてはならないとされ、途中の辻ごとに見張りが立つ。元日の朝十時ごろから曼陀羅を床の間に掛け、僧に祈禱を頼み、盃を回して船祝い唄を歌う酒宴になるという。
原典より
曼陀羅の送迎は人の目に触れてはならないということで、途中辻ごとに見張りの人が立つという厳重さである。—— 厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
厄除け――日本人の霊魂観(佐々木勝・民俗学・厄除け信仰・1988年(昭和63年))
『厄除け――日本人の霊魂観』は、佐々木勝が昭和六十三年に名著出版から刊行した民俗信仰の論考集である。鬼・悪魔・疱瘡神・一つ目小僧など人に災いをもたらす神霊を「厄神」と総称し、その来訪を防ぐ呪術と祀り上げる祭祀を、著者の民俗調査と国学院大学民俗学研究会の採訪記録などの事例から説く。禁忌と呪術、百鬼夜行と目籠、鬼の宿と笹神様、年神とミタマの飯、厄年と年祝い、正月行事と司祭者など八章からなり、うち四章は書き下ろしである。