葬式の晩に夫を迎えに来た亡き嫁
どんな伝承か
土淵村栃内の川前という所の家で、若い妻が傷寒のような病で亡くなった。葬式の晩、村人が集まって念仏をする前に、縁側の水桶で手を清めるのが習わしである。隣家の娘が手を洗いに出ようと障子を開けると、外からも誰かが開けて入ってきた。見ればそれは昼に葬ったばかりの嫁で、座敷を通り抜け、炉端の夫のもとへ歩いていった。夫は狂乱したが、ほかの者には何も見えない。亡き嫁は毎晩来て一緒に行こうと泣き、夫は七日目についに死んだという。
原典より
それを見ると昼間葬式したばかりの此の家の嫁であった。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。