梵字沢を駆け下りた死んだ力持ちの婿
どんな伝承か
著者の養母のもとに、村の薬師堂の別当の次男が婿に来た。この人は村一番の力持ちで、どこの田の草相撲でも負けたことがなかった。ところが土地の中年の相撲取りに、稽古をつけるふりで毎夜呼び出されて夜明けまで揉まれ、ついに急所を痛めて十九か二十で亡くなったと、著者の祖母はよく語っていた。葬式からまもない頃のある夜、梵字沢という山道を、見たこともない着物を着た男が峰の方から柴木をかき分けて村へ駆け下りてくるのを見た人があったという。
原典より
峯の方から見たことも無い衣物を着て、わりわりと柴木を分けながら村屋の方へ走り下りるのを見た町人があつた—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。