厳寒の夜に破裂するコダマ鼠
どんな伝承か
羽後の国、北秋田郡荒瀬村は同国のうちでも有名な山郷で、村の大部分は狩猟で一年の生計を立てている。この村の山中にはコダマ鼠という、普通の鼠よりやや小柄で、焦茶色の艶のある毛色の鼠が住む。酷寒で樹木の枝が凍り折れるほど冷え込むとき、木の股などで実に恐ろしい音を立てて破裂してしまうという。狩人がその音響をたよって行ってみると、鼠の背がぽんと割け裂けて死んでいる。木蔭で獲物の来るのを待って耳を澄ましていると、その破裂する音がぼんぼんと素敵な音を立てて遠近に聞こえ、何となく淋しいものだと、土地の老いた狩人は語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・大正・昭和(東北民俗))
『遠野物語』の語り手・佐々木喜善が大正昭和期に郷里岩手で採集した東北の昔話・伝説の集成。冒頭の『奥州のザシキワラシの話』では、旧家の座敷に出没し家の盛衰を司るザシキワラシの諸相を集める。『江刺郡昔話』『紫波郡昔話』に続き、『東奥異聞』では不思議な縁女の話・黄金の牛・磐司磐三郎・千曳石・赤子抱き・偽汽車など奇譚を収める。