去る氏神娘と山口孫左衛門家の滅び
どんな伝承か
山口の孫左衛門の家が瓦解する少し前の話である。この家の爺様が町から帰って来ると、夕方、留場の橋の袂に美しい娘が三人立って泣いていた。どこの娘たちかと問うと、今まで孫左衛門どんに居たが、もう居られなくなるので、気仙の稲子沢の家へ行くと言った。爺様はこれでは我が家も終りだと思った。その当時、馬舎から下肥を取り出すとおびただしい蛇が際限なく出たので、下男たちは畚に入れて邸内へ捨てた。秋になるとそこら一面に美しい茸が生え、それを食べた家族は皆死に、他所で遊んでいた十三の女の子だけが助かった。また夜ごと隣近所へ喧嘩のような物音が聞こえ、世間では氏神様と貧乏神の争いだと言った。この家は今では跡形もない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。