一文銭から煙草屋を興した藤七
どんな伝承か
藤七はひどい怠け者で、どこへ奉公に出ても長続きせず、兄の藤吉の家で養われていた。ある時、七間四方の家を建ててくれれば厄介をかけないと言い、兄は町の手ごろな空き屋敷に家を建て、鍋と米三升を与えた。米が尽きると藤七は袂に残った一文銭で藁一束を買い、差縄に綯って三文で売り、藁屑まで雪草鞋用に売った。続けて燈心を売り、その殻も煙草の葉を結ぶのに売るうち煙草屋に出入りし、茎取りの腕を見込まれて雇われた。藤七の刻んだ煙草は吸うと煙が梅の花になって散るので飛ぶように売れた。やがて主人の世話で元の家に一文字屋という煙草屋を開き、町一番の大店になったという。
原典より
或時其所に人が来て、藤七の切った煙草を買ってのんで見ると、すうと吹きのけて上がる煙は綺麗な梅の花になつて散らけてゆく。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。