老父の知恵と唐の難題
どんな伝承か
昔は六十になるとデンデアラ野へ送られる決まりだった。ある孝行息子は老父を捨てるに忍びず、床下にかくまって養っていた。そのころ唐の殿様から、灰で縄を千束作れ、七曲がりに曲がった木に穴を通せという難題が届き、日本の殿様の御殿には解ける者がいなかった。褒美を約した触れが出たので息子が老父に尋ねると、縄を鉄の箱に入れ塩を振って焼けば灰縄になり、木の端に蜜を塗って糸を結んだ大赤蟻を反対の端から放せば穴が通ると教えた。こうして日本が勝ち、息子の願いで老人を野に捨てる習いはやんだという。
原典より
そして其男の望みは六十になっても老人をデンデアラ野に棄てぬといふ事であつたので、それからそんな事は沙汰止みになつた。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。