南羽端の沼から異界へ入った甚内
どんな伝承か
昔、鬼柳村に扇田甚内という人がいた。ある朝早く南羽端の上を見ると若い女が立って手招きしていた。二三朝続いたので沼のほとりへ行くと、二十ばかりの美しい女が、夫婦になる約束があるから家へ来てくれと言う。ついて行くと見たこともない世界に出て、大勢の美しい女に主のように敬われて月日を送った。故郷が恋しく暇乞いに帰ると、一月のつもりが三年経ち、村の正覚寺の和尚を招いて自分の法事の最中であった。口外するなという約束を破った途端、甚内は腰が折れて廃人となった。
原典より
昔鬼柳村に扇田甚内といふ人があつた。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。