三年の失踪から轟音とともに帰った男
どんな伝承か
千丈寺山の松住権現については、『門野氏郷土話』に別の言い伝えが載る。乙原の住太郎兵衛の一族の一人が三年ほど行方知れずになっていたが、ある夜更け、とどろくような大きな音とともに家へ帰ってきた。そして、自分は松太郎だが今は千丈山の権現の仲間入りをしたと告げ、これからは小熊嶽松君大権現と名を改めて崇め祀れ、そうすれば何ごとでも願いを一つかなえてやると言った。この噂が広まると近在から参詣の人が列をなしたが、四、五年ほどで廃れたという。なお『郷土の民話摂丹編』は、権現を乙原の吾作としている。
原典より
今後は名も小熊嶽松君大権現(しょうゆうがくまつぎみだいごんげん)と崇めて祭れ、何事によらず願いの1つは叶えてやる』といった。—— 兵庫県民俗調査報告8――伝説(兵庫県(編)・兵庫県民俗調査報告) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
兵庫県民俗調査報告8――伝説(兵庫県(編)・兵庫県民俗調査報告)
『兵庫県民俗調査報告8――伝説』は、兵庫県の民俗調査報告の一冊のうち、第10章「口頭伝承」を収めたものである。三田市の乙原・小野・尼寺・青野・末の各地区を対象に、集落の発祥や神社、廃寺、城跡にまつわる伝説、天狗に導かれたという松住大権現、狐狸の怪、狼の話などを、聞き書きと『門野氏郷土物語』などの郷土の記録から記す。伝説のあとに昔話とわらべ歌を続け、わらべ歌は地元の中学校生徒会の協力で集めた尻とり歌や羽根つき歌を載せる。