弓力親方の振舞酒でそれた強訴
どんな伝承か
三田市末西に伝わる。天明か天保の飢饉に強訴があり、青野辺の百姓が手に手に竹槍や掛矢を持ち、鉦や太鼓を叩きトキの声をあげて、隣の庄屋門野家へ押し寄せて来た。いち早く気配を察した弓力が酒樽の鏡を破って杓で汲み、「やあ、皆の衆ご苦労さん、これで元気をつけて三田へ急いでおくれ」と言うと、百姓たちは喜んで酒を飲み、その勢いで加茂の方へなだれ出たので、門野家は少しの被害もなく喜ばれた。後で判ったことだが、強訴が大原まで押し寄せると広野の方からも大勢押しかけ、鎮圧に出た三田藩の武士たちも人波に圧倒されて、道を譲り山や田畑へ逃げ込んだと伝えている。
原典より
その時、一早くその気配を察した弓力(初代?2代?は不明)が、酒樽の鏡(蓋)を破って杓で汲み『やあ、皆の衆ご苦労さん、これで元気をつけて三田へ急いでおくれ』といえば…—— 兵庫県民俗調査報告8――伝説(兵庫県(編)・兵庫県民俗調査報告) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
兵庫県民俗調査報告8――伝説(兵庫県(編)・兵庫県民俗調査報告)
『兵庫県民俗調査報告8――伝説』は、兵庫県の民俗調査報告の一冊のうち、第10章「口頭伝承」を収めたものである。三田市の乙原・小野・尼寺・青野・末の各地区を対象に、集落の発祥や神社、廃寺、城跡にまつわる伝説、天狗に導かれたという松住大権現、狐狸の怪、狼の話などを、聞き書きと『門野氏郷土物語』などの郷土の記録から記す。伝説のあとに昔話とわらべ歌を続け、わらべ歌は地元の中学校生徒会の協力で集めた尻とり歌や羽根つき歌を載せる。