万石騒動と斬られた三義民
どんな伝承か
正徳元年十一月二十六日、安房郡館野村大字國分萱野の芝で、罪なくして三人の義民が斬に処せられた。山越左太夫・秋山長左衛門・根本五左衛門で、その屍は後に國分の釈迦堂の傍らに葬られ、今も近郷の村民の崇敬を集めている。騒動は、安房・朝夷二郡に一万石を領した屋代越中守忠位が、奸臣川井藤左衛門を重用したことに起こる。正徳元年秋、川井は検見に際して最も出来のよい坪を選んで刈らせ、それを標準に年貢を課したため、六千余俵もの増収となった。村方は陣屋に歎願し、老中阿部豊後守へ駕籠訴にも及んだが、屋代家は首謀と見た三人を処刑した。後に川井は斬罪となり、忠位も封を除かれた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。