歌一首で火刑を免れたころびきりしたん
どんな伝承か
仮名草子『江勢物語』に、キリシタン禁制のもとで捕らえられた夫婦の話がある。二人は武蔵野へ連れて行かれ、罪人として町奉行に縛られ、草むらに据えられて火あぶりにされようとした。そのとき女が「武蔵野は今日はな焼きそ浅草や夫も転べり我も転べり」と詠み、夫も自分もたった今改宗したと訴えた。奉行はこれを聞いて夫婦をともに助け、追放にとどめたという。転ぶとは信仰を捨てて改宗することで、そうした者はころびきりしたんと呼ばれた。処刑の場となった浅草原の刑場は今の台東区鳥越にあたり、のちに今戸橋の南、さらに小塚原へと移された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路・幽霊・文学史・昭和)