長福寺の稲荷狐と油揚を追った白狐
どんな伝承か
野上の長福寺の寺山には稲荷が祀られていたが、境内の大半が畑にされて居場所を失った狐は、伊香保の稲荷のもとへ移ったと語られる。のちに長福寺の女たちが伊香保へ泊まった折、一人にその狐が取り憑き、長福寺の人に見つかったから付いて行くと言わせ、その人は一春患って死んだ。罠にかかって死んだ狐の骨を長福寺の人が持ち帰ると、その家の女も病んで亡くなったという。昭和三年頃には、妙義町八木連へ嫁いだ娘が里帰りの折に富岡へ油揚を買いに出て、帰り道の上高瀬で女に化けた白狐に出会い、家まで背に乗られて付きまとわれた。狐は台所の鍋を平らげて去り、娘は一週間ほど頭痛に悩んだという。千平や鷺の宮の憑依例も添えられている。
原典より
野上の長福寺の寺山に稲荷様があったが、僅かの土地を残して、他を畑にしたためキツネがおられなくなって、伊香保のキツネの所に行って同居していたという。—— 富岡市史 民俗編――昔話・伝説・世間話(富岡市(編)・富岡市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡市史 民俗編――昔話・伝説・世間話(富岡市(編)・富岡市史)
『富岡市史 民俗編――昔話・伝説・世間話』は、富岡市が編んだ市史の民俗編のうち、民俗知識の章の末尾と口頭伝承の章を収めたものである。口頭伝承の章は、昭和四十年代以降の中学校郷土部の採話や額部地区の民俗調査、市史編さんの調査で聞き取った昔話・伝説・世間話と、富岡・甘楽方言の解説から成る。伝説は自然的・社会的・信仰的の三つに分け、羊太夫や小野小町、貫前神社にまつわる話と多くの地名起源を載せる。