座頭ころばしで狼の棘を抜く
どんな伝承か
大倉山の南麓には、富岡から川内へ至る山道が曲がりくねって続いていた。その途中に座頭ころばしと呼ばれる難所があり、道の傍らに山の神が祭られ、片方は崖という危うい場所であった。むかし、毛萱村の女がひとりでここを通りかかると、道端で何かがうめいている。近寄ると耳まで裂けた大きな口の獣で、狼に違いなかった。だが狼は口を開けたまま動こうともしない。女が恐る恐る口の中を見ると太い棘が刺さっており、そのために物も食べられず弱っていた。女が力を込めて棘を抜いてやると、狼は藪へ消えた。以後、女がこの場所を通るたびに狼が現れ、尾を振って見送ったという。
原典より
「四方豁達、眇茫たる太平洋を望み、眺望絶佳なり」とうたわれた大倉山の南麓には、富岡より川内に至る山道が、曲折の中に続いていた。—— 富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史)
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説』は、福島県富岡町の町史のうち考古・民俗を扱う巻で、ここにはその第九章「昔話と伝説」が収められている。昔話の節は昭和五十八年五月の福島県教育委員会による文化財基礎調査のまとめに町の既刊の話集から数編を加えたもので、麓山の白蛇や、大原の大吉・金平六など名のある狐の話が目立つ。伝説の節には朝賀城哀話、仏浜、戊辰戦争、鉱山、北風薬師などを収め、各話に伝承者の地区と名を添える。