骨の礼に鹿の後足を届けた狼
どんな伝承か
岐阜県恵那郡福岡町木積沢(現中津川市)の話。今から五代ほど前、明治より五十年ばかり前の時代のこと。上から二軒目の家に代々「長」の名を継ぐ者があり、その何代目かの長吉という強い男が蛭川から帰る途中、道で狼が大きな口を開けて向かってきた。よけて通ろうとするとまた前に回って口を開く。おかしいと思ってのぞくと骨が見えたので、石を口にはさんで手を入れ、鹿の骨を引き抜いてやった。翌朝、表の戸で物音がして出てみると、鹿の後足が一本転がっていた。狼は人間より義理堅い、神さまにしておかねばならないと人々は語り伝えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。