前祝いで負けた長者の鰹つり
どんな伝承か
ある日のこと、仏浜村の庄屋遠藤政右衛門と下小浜の長者とが茶飲み話に興じているうちに自慢話となり、ついには鰹つりの腕を競おうということになった。両者とも負けてたまるかと意気も盛んなら自信も満々である。長者は勝負もせぬうちから自分の勝ちを見越して前祝いを盛大にやり、雇人たちに夜遅くまで酒をふるまった。一方の庄屋は雇人に餅を腹一杯食べさせて早く休ませた。さて翌朝、小舟二艘が出て鰹つり競争が始まったが、結果は一目瞭然であった。長者の雇人は宿酔でふらふら、庄屋の雇人は充分に休養をとっていたので精一杯の活躍をして大勝利をおさめたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史)
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説』は、福島県富岡町の町史のうち考古・民俗を扱う巻で、ここにはその第九章「昔話と伝説」が収められている。昔話の節は昭和五十八年五月の福島県教育委員会による文化財基礎調査のまとめに町の既刊の話集から数編を加えたもので、麓山の白蛇や、大原の大吉・金平六など名のある狐の話が目立つ。伝説の節には朝賀城哀話、仏浜、戊辰戦争、鉱山、北風薬師などを収め、各話に伝承者の地区と名を添える。