夢で決めた名のとおりの三つ子
どんな伝承か
本所石原に住む設楽という人の召使いの女が懐妊し、三つ子を生んだことがあった。その名を文・職・思・議と名づけ、今はいずれも二十歳になるはずである。設楽の家来である石黒某が語ったところによると、物には自然と感じる前兆もあるものか、設楽が初め小十人組を勤めて江戸城三の番にいたころ、夢の中で三つ子を儲け、名を何と付けるべきかと考えた。文・孝・忠・信としようとしたが、信は残りの三字にも渡る字だと思い、文・職・思・議と付けるべきだと思って夢が覚めた。おかしな夢を見たと思っていたが、果たして三つ子を儲け、その通りに名を付けたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年))
『科学的教養』は、小泉丹が昭和二十三年に春秋社から刊行した、科学的なものの見方を説く評論である。精確さ・合理性・実証の面から科学的と非科学的の違いを論じ、河童の記録や呪いの効き目、『耳袋』の怪異談、狐憑き、幽霊・化物屋敷、人魂・鬼火・怪火を例に、日本人のものの考え方を検討する。昭和十七年に書いた前版を戦後に改稿したもので、序と起序に続く七章から成り、旧稿の終わりの二章を除いたと序に記す。