人魂となって飛び去った蝦蟇
どんな伝承か
人魂というものは蝦蟇のしわざだと見届けた人の話が伝わる。御普請方の役目で鎌倉へ出向いたある人が、夕方、宿の庭の垣根の下に一匹の蝦蟇が来てしきりに土を掘るのを見た。蝦蟇はほどよい穴を掘って中に入り、自分の足で土をかぶって、とうとう土の中に隠れてしまった。その夜更け、厠の窓から空模様をうかがうと、垣根の下でバッと音がして、光るものがふわりと飛び出し、どこかへ消えた。夜明けを待って見に行くと、そこは蝦蟇が潜った場所で、土が四方に散り、白い泡のようなものが残るばかりで蝦蟇はいなかった。蝦蟇が人魂に化したに違いないと語ったという。
原典より
さて其夜三更のころ厠に入りて窓の元より日和や如何にと見たるに垣の下よりバッと云ふ音ありて光るものファー と飛出で、何所へか失ぬ。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。