代金を約して熱が引いた木挽
どんな伝承か
石見国安濃郡川合村の川合に住む那須清吉は、農業のかたわら木挽をしていた。ある日、同じ村の家から林の木を買う約束をし、代金は期日までに払うことにして、翌日さっそく伐りに出た。ところが仕事の最中に急に熱が出て、帰って寝込んでしまった。見舞いに来た売り主の顔を見て、その家の女房が外道持ちと噂される人だと思い出し、代金を払わずに伐ったので女房が心配し、外道を寄越したのかもしれないと考えた。そこで、間違いなく払うから安心してくれと告げると、相手は迷惑そうに、金のことなど疑っていないと弁解して帰った。すると清吉の熱はたちまち引き、外道は納得すれば落ちるという話は本当だと感心した。
原典より
仍で岡市に對ひ貴君は代金の事を心配するのかも知れぬが、間違ひなく支拂うから安心するやうにと言つたら、…—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。