果無山脈に棲む一本ダタラ
どんな伝承か
吉野山中の十津川郷の平谷からは、熊野との境をなす果無山脈が見わたせる。名のとおり果てしなく連なる山並みだが、昔は熊野詣での道のひとつで、上りと下りがそれぞれ七十二丁の坂道を人々が行き来した。ところがこの山中にも一本ダタラという怪物が棲んでいた。足が一本で、目は皿のようだったという。ふだんは人に害をなさないが、果ての二十日だけは危ないとされ、その日はめったに人が通らなかった。果てに人が通らないことからハテナシの名がついたともいわれる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。