果ての二十日に汗をかく守り鉄砲
どんな伝承か
伯母ヶ峰から三里ほど北の柏木という里に、腕力も胆力も人に勝り、鉄砲の名手でもある栄造という猟師がいた。ある晩、玉を鋳ながら囲炉裏端の板に並べていくと、そばの飼い猫がその一つ一つに触れる。糸車を回していた老婆がこれを見て怪しみ、明日の山行きには隠し弾を忘れるなと注意した。隠し弾は名号を刻んだ玉で、必ず当たる代わりに一代に一度しか使えず、使えばその日限りで猟をやめる決まりだった。果ての二十日の朝、伯母ヶ峰へ入った栄造は古猫に襲われ、玉を撃ち尽くしたのち隠し弾で追い払った。里ではその鉄砲を庄屋に預けて村の守りとし、毎年その日に取り出してみると、決まって汗をびっしょりかいているという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。