新式のハサミを引きずって逃げた狼
どんな伝承か
三之公の八幡平に住む人が十五、六歳のころの話。横浜から取り寄せた新式のトラバサミを山に仕掛けておくと、狼がかかった。けれども狼はハサミをつけたまま逃げてしまい、ねじ曲がったハサミは湯谷に捨てられていた。それ以来、狼はこのあたりにめったに来なくなり、ほかの獣がよく来るようになったので村人は喜んだ。狼がいると、どんな獣も遠くへ逃げてしまうものだという。猟犬でさえ狼がいると知ると、主人の股の間にもぐり込み、どうしても動こうとしなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。