果ての二十日に現れる一本足の猪笹王
どんな伝承か
大和国吉野郡の上北山村と川上村の境にある伯母が峰で、峠の南側の天が瀬に住む射馬兵庫が、名犬の斑犬を連れて背に熊笹の生えた老猪を追い、鉄砲で撃ち傷つけたが逃げられた。数日後、紀州湯の峯の温泉宿に足を痛めた野武士が泊まり、のぞくなと言い置いたが、主人がのぞくと熊笹を背負った怪物が寝ていた。猪笹王の亡霊と名のり、兵庫の鉄砲と犬を手に入れてくれと頼んだが、兵庫は応じない。亡霊は一本足の鬼となって峠で旅人を襲い、街道は廃れた。丹誠上人が地蔵尊を勧請して鬼を封じ、経堂塚に経文を数巻埋めて往来を取り戻したが、十二月二十日の果ての二十日だけは鬼の自由とされ、今も厄日だという。
原典より
今日でも「果ての二十日」と呼んで、伯母が峰の厄日とされて里人が近寄らぬよう警戒されている。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。