手習いを禁じる逃入村の祟り
どんな伝承か
『北越雪譜』二編にいう、越後の逃入村(魚沼郡小千谷在)の不思議である。この村には大塚小塚と呼ぶ大小二つの古墳が並んでおり、里の伝えでは大きいほうを時平の墓、小さいほうを時平の夫人の墓とする。時平大臣夫婦の塚が北越にあるはずもゆかりもないのだが、ここに一つの不思議がある。昔からこの逃入村の人が手習いをすると天満宮のたたりがあるといわれ、村中の人がほとんど無筆なのである。村を離れてよその村で手習いをすればたたりはないが、村へ戻って暮らすと日に日に文字を忘れ、ついに再び無筆になるという言い伝えがある。
原典より
その不思議というのは、昔からこの逃入村の人が手習いをすれば、天満宮のたたりがあるというので、村中の人ほとんどが無筆なのである。—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。