死霊を祀らせ予言を当てる十一歳の娘
どんな伝承か
長野県下伊那郡山吹村の鍛冶職某の妻についての報告である。先妻は長女を産んで死に、後妻が次女を産んだ。明治十九年、長女は十一歳、次女は三歳で、四人は貧しいながら暮らしていた。ある日、長女が突然「私がこの数か月で一家を豊かにします」と言い、父が外で夕飯を食べて帰ることまで言い当てた。さらに「この家には死霊のたたりがあるから祀れば金持ちになる」と告げ、知るはずのない昔の由来まで詳しく語ったので、両親は庭に小祠を設けて死霊を祀った。以後、長女は未来の禍福を予言し、紛失物の在りかを告げて十中八九当て、門前市をなしたが、両親は礼金を一切取らなかったという。
原典より
ところが長女が傍にいて母に、『お父さんはよそで晩飯をたべてから帰ってきますから、別に用意する必要はありませんよ』と言った。—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。