蘇生して仏舎利を握っていた念仏者
どんな伝承か
『新著聞集』から引かれた話。丹波の船井郡藍田村の山内常七は並ぶ者のない念仏の信者で、何より慈悲を重んじる人だった。元禄二年十二月一日に二十九歳で亡くなったが、翌日息を吹き返し、冥土でありがたいことが数多くあってこの仏舎利をいただいたと言って、左の手に光り輝く一粒を握っていた。村人は不思議な縁だと大勢集まり、心から合掌して念仏を唱えた。常七は三日の昼ごろ、今度こそ安らかに往生を遂げた。その後、あの舎利はどこかと皆で探したが見つからず、常七があの世へ持って行ったのだろうと、人々は涙して念仏に励んだという。
原典より
元禄二年極月朔日に、二十九歳で此の世を去ったが、翌日蘇生して、『私は冥土で有難いことがたくさんあって、この仏舎利を頂戴した』と言って、左の手の中に、光明赫灼たる一粒を握っていた。—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。