背中に他人の名を記して生まれた子
どんな伝承か
美濃国の山田大助という人からの報告である。美濃国本巣郡北方村九番地の飯沼常七という人の次男萬治が、本年二月に初めて生まれたが、その背中には「谷口治兵衛」の五字が記されていた。そのため、この子は再生児、すなわち谷口治兵衛の生まれ変わりだという人があったという。この一件は新聞にも掲載された。円了は、身体に前生のしるしを帯びて生まれるとされる「再生」の報告を各地から集めており、本条もその一例として書きとめられている。
原典より
美濃国本巣郡北方村九番地飯沼常七という人の次男萬治が、本年二月始めて出生したが、その背中に、谷口治兵衛の五字が記してあった。—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。