半日に五十八回も物が投げられる家
どんな伝承か
越後国南蒲原郡大字中条の安達富造の家で起きた怪事。家族は老母、夫婦、息子一人と娘二人の六人だった。ある日の午前七時ごろ、棚の上から食器が立て続けにたくさん落ちてきたのを始まりに、その後も家の内外の道具や品物が投げ飛ばされ、算盤をはじいて割り算をするようなことまであった。ある日には半日で五十八回も物が投げられたという。隣村の者が二、三人連れ立って見に行くと、その一人の顔にマッチがぶつけられた。この件を知らせてきた人の手紙には、その家の長男の言動に怪しいところがあると書き添えられていた。
原典より
或る日には、半日間に五十八回物品を投げたこともあるという。—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。