昔話・大蛇の夜ばい(蛇婿入)
どんな伝承か
温田の方からやってくると、急にひらける場所に沼があり、大蛇がすんでいたという。その大蛇は矢野の部落の美しい娘のもとへ、毎晩若い男の姿になって夜ばいに通い、娘はとうとう子をはらんだ。娘の親の指図で、帰りぎわの男のほっかぶりに糸をつけた針を刺し、糸をたどって行くと沼に着いた。そこで蛇が親に、自分は鉄の毒で死ぬが子は残ると話しているのを聞き、家へ帰って娘に飲ませると子は落ちたという。沼から流れる水が時おり赤くなるのは蛇の血のためで、頬に絹針を刺されて死んだ蛇から、その沼を「ほおのきばり」というようになったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新野民俗誌稿――長野県下伊那郡阿南町(口頭伝承)(湯田朝子(第十五章「口頭伝承」))
『新野民俗誌稿――長野県下伊那郡阿南町(口頭伝承)』は、阿南町新野の民俗誌稿のうち、湯田朝子がまとめた第十五章「口頭伝承」の報告である。昭和五十三年一月に新野の古老五人から採話した昔話・伝説・ことわざ・なぞを収め、昔話には日本昔話名彙・日本昔話集成の話型を注し、伝説は信仰的・歴史的・文芸的の三つに分けて話者の名と生年を添える。昔話の語り始めと語り納めの形式や語りの場の変化も記し、ことわざとなぞで結ぶ。