箭竹で囲った伊豆山の産小屋
どんな伝承か
伊豆山では、産小屋の暮らしにまつわる決まりが厳しく守られてきた。産が済むと産婦はすぐに小屋へ移り、夫とともにそこで過ごす。小屋は一間半四方の草葺き平屋で、周囲を竹垣で囲い、垣には悪魔除けとして箭竹を立てた。夜は夫が来て番をする。水が引かれていたので、産婦は小屋にいたまま煮炊きも食事も済ませられた。小屋を出るときは湯滝で身を清め、着物を改めて家に帰る。ただし帰宅後も三十日はベヤ、あるいはカコイと呼んで庇の縁に仮住まいし、家族と食べ物を共にしない。三十日目を中上りといった。小屋は東谷と峯谷の二つの字にあったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。