夏に鳥と化す賀田浦の立介
どんな伝承か
貝が鳥になるという言い伝えの例として、著者は本草啓蒙と紀伊続風土記を引く。紀伊続風土記によると、立介(タチカイ、別名鳥介)は玉珧に似て幅が狭く、長さ七、八寸ほどの貝で、冬から春にかけて食用にする。ところが夏になると身がしだいに変じて鳥になる。その鳥は磯ひよどりに似て白く、尾がなく、ヒョオと鳴くという。この貝は牟婁郡曽根荘の賀田浦に多い。本草啓蒙も、タイラギについて、備前や紀州の人はこの貝が化して鳥になると言っていると記している。
原典より
立介タチカイ一名鳥介、同名多し、玉珧に似て幅狭く長さ七八寸冬より春に至つで食用こす夏月肉漸く化して鳥こ成る、…—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。