オゲコ谷の洞穴から通った糸紡ぎの婆
どんな伝承か
三木里には昔から夕顔を作らない習わしがある。三木里の片面というところにオゲコ谷があり、底の知れない洞窟があった。いつの頃からか徳八の家へ、その洞窟から不思議な婆が毎日来て糸繰車を回した。欠伸ばかりし、飯はすりきり一杯しか食べず、いくら紡いでも紡錘は太らない。日暮れには「行こぞよ緒巻な婢、また来うぞよすりきりよ」と言って洞へ帰った。欠伸を憎んだ徳八が焼いた礫を口へ投げ入れると、婆は叫んで逃げ、後日洞窟で山犬が死んでいるのが見つかった。その年この家の夕顔は老人の面に似た大きな実をつけ、切ると真赤な血がほとばしった。八十川へ捨てると実は向いへ泳いで行き、徳八の家も絶えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。