一条戻橋で綱が斬った宇治の橋姫の腕
どんな伝承か
嵯峨天皇の時代、嫉妬深い公卿の娘が貴船の社に七日籠もり、生きたまま鬼神にしてほしいと祈った。宇治の川瀬に二十一日浸かれとのお告げを受け、髪を五本の角に結い、顔と体を赤く塗って鉄輪をかぶり、火をくわえて川に通い、ついに鬼となった。これが宇治の橋姫だという。のち頼光の使いで一条堀川の戻橋を通った渡辺綱は、美しい女に送ってほしいと頼まれて馬に乗せたが、女は鬼に変じて綱の髻をつかみ愛宕山へ飛んだ。綱が刀で腕を斬ると北野社の廻廊の屋根に落ち、のちに養母に化けた鬼が切られた手を取り返して空へ消えたと平家物語は伝える。
原典より
綱は少しも騒がす、刀を抜いて鬼の手をふつと切ると綱は北野の社の廻廊の屋根の上にぎつと落ちた。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。