羅生門の鬼と渡辺綱
どんな伝承か
謡曲羅生門の筋。渡辺綱が印の金札を立てに羅生門へ向かうと、春雨の夜に雨風が激しくなり、東寺の前を過ぎて九条の通りへ出たところで馬が身震いして進まなくなった。綱は馬を下りて門の石段に上り、札を壇上に置いて帰ろうとしたとき、背後から兜の錏をつかまれた。綱は兜の緒を引きちぎって飛び下り、太刀を抜く。軒にも届く鬼神が鉄杖を振るって打ちかかったが、綱はその腕を斬り落とした。鬼神は黒雲に紛れて虚空へ上り、時を待ってまた来ると叫ぶ声がかすかに聞こえたという。
原典より
網は兜の緒をひきちぎつて飛びのいて太刀をぬいてその腕を切り落した。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。