鉄網の籠に飼われた鮫ヶ橋の雷獣
どんな伝承か
『類聚名物考』によれば、明和八年三月一日、江戸の鮫ヶ橋北町、土地の人が栄連寺谷と呼ぶ所にある和泉屋吉五郎の家で、鉄網の籠に入れた雷獣が飼われていた。もぐらがうごめくような姿で、額の毛は白く、鼻先は猪に似て目つきが鋭い。鼻先から尾の付け根まで二尺五寸あまり、尾は七寸五分ほどで、毛には白・黒・鼠・柿色がまだらに混じっていた。爪は鷲のようで、蛇やケラ、ヒキガエル、クモを食べ、飯を与えてもよく食べたという。
原典より
明和八年卯三月朔日江戶鮫ヶ橋北町今里人榮連寺谷こいふ所、和泉屋吉五郎方に、鐵網の籠に入れ有之。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。