子狐を救った重道に妙薬を贈った白狐
どんな伝承か
奥羽永慶軍記によれば、道綱の五男四郎重道は十八歳、穏やかでまっすぐな性分だった。ある日、五条河原のあたりで子どもたちが狐の子を捕まえて殺そうとしているのを見て、宝物と引き換えに譲り受け、稲荷山に放してやった。その夜、姉小路の宿で一人西山の月を眺めていると、庭先に翁が忽然と現れてひざまずき、わが子の命を救ってくれた恩を返しに来たと言う。稲荷大明神に長く仕える白狐だと名乗り、懐から神から授かった妙薬を一包み取り出して重道に贈った。今年のうちに所領の主となれるだろう、はるか東国の羽州山北を望めば子孫が長く栄えると告げて消えたという。
原典より
重道是れを見て群童に謂て曰く、狐我れに奥へよ、然らば實物を以て夫れに替へんこて即ち狐を請ひ取り稻荷山に放つ。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。