昔の恩で許された子狐打ちの角兵衛
どんな伝承か
犬著聞集によれば、丹後国岑山の角兵衛が昼寝をしていると、そばに狐が子を連れて出てきて遊んでいた。角兵衛はこれを追い散らし、逃げ遅れた子狐一匹を半殺しにして捨てて帰った。それから狐が憑いていろいろなことを口走り、祈祷も加持も効かなかった。ところが憑いた狐が急に膝をかがめて挨拶するような様子になり、子を打たれて怒るのはもっともだが、七、八年前に子連れで遊んでいて犬に食い殺されかけたとき、この人が犬を追い払って助けてくれた恩は忘れがたい、今度は許してほしいと頼み込み、許しを得たと言った。そう言って突っ伏して眠ると、夢から覚めたように狐は落ちた。天和二年十月の事という。
原典より
家にかへると、狐がついて祈っても落ちなかつたが、後に狐が自分は一度犬に惱された時助けて貰ったことがあるからと言つて去った。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。