地震の直前に磁石から落ちた釘
どんな伝承か
大地震の前には地磁気の変動を起こすことがある。安政の大地震のとき、江戸蔵前のある眼鏡屋の店頭にあった磁石から、吸いつけてあった釘がバタリと落ちると、すぐに大地震になったという。もっともなことではあるが、これだけで大地震の前兆とはされない。地磁気の変動の原因はほかにもあるからである。ほかに農家の言として、夜間に土地に孔が多くできて細い土を土竜の墳のように噴き出すとか、野を耕すときに煙が出るという話も伝えられている。
原典より
安政の大地震の時、江戸藏前のある眼鏡屋の店頭にあつた磁石から、吸ひつけてあつた釘がバタリと落ちるとすぐ大地震になつたさいふことであるこれは尤もなことではあるが、ただこれだけで大地震の前徴とはされない。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。