改宗を詫びに来た惣八の亡魂
どんな伝承か
江戸浅草の元鳥越明神の前に神主長屋があり、これを差配する惣八という男がいた。生まれつき体が弱く、薬を手放したことがない。ある日、惣八は菩提寺である浅草小揚町の浄土宗浄念寺を訪れ、病が治らないので日蓮宗に改めたい、ただし夫婦だけのことで子供は浄土宗のままにすると、申し訳なさそうに願い出た。住持は快く承知した。文政七年の大晦日の昼下がり、見る影もなくやつれた惣八がふたたび寺を訪れ、改宗しても良くならず黄泉へ赴くことになった、先の願いは取り下げるので従来どおり葬ってほしいと述べて帰る。住持が小僧を走らせると、惣八は前夜すでに死んでいた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年))
『日本の妖怪』は、早川純夫が一九七三年(昭和四十八年)に著した妖怪史の読み物である。『出雲風土記』『日本書紀』から『日本霊異記』『今昔物語』、江戸の『新著聞集』などの随筆までの古典に記された妖異を、かかわりのある実在の人物や事件とともに古代から近世へ時代順にたどる。全八章で、引用は意訳を交えて『』でくくり、仏教談や霊験談、地方の民話はおおむね除き、第七章には江戸の見聞録から選んだ二十話を並べる。