谷底へ転落死した馬子の亡魂と青い火
どんな伝承か
三年前に宮ノ下から堂ヶ島へ向かう途中で道を踏み外し谷底へ馬もろとも転落死した馬子の亡魂が、毎夜断崖に出るという噂が立つ。買い出し帰りの五助が夜十時頃、崖下から燃え上がる青い火とその後ろに髪を振り乱した男の姿を見て倒れ、以後高熱で寝込んだ。滝の家でも客・女中・下男の大半が目撃し、宿は客が絶えて閑散となった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊を退治(林田龜太郎(述)/曉汀(筆記)・新公論 1915年1月号・1915年(大正4年))
『幽霊を退治』は、衆議院書記官長の林田龜太郎が語り、曉汀が筆記した雑誌記事「幽霊を退治した實驗」である。堂ヶ島の宿で保養中、幽霊騒ぎで客が去ったと聞いた語り手が、宿の者の目撃談を聞き取ったうえで短刀や短銃を携えて夜の崖道へ出向き、青い怪火が古株の燐火、幽霊の姿が草と苔の生えた岩角であったと突きとめるまでを一人称で述べる。ファイルの前半には、新橋の芸者の不貞を尾行で調べた別の探偵実話も収める。