嫁入りの馬上から消えた雫石の娘
どんな伝承か
陸中岩手郡の雫石村の農家で、娘を嫁にやるとして飾り馬に乗せ、松明に火をつけている間に娘の姿が消えた。方々を捜しても見つからなかったが、二、三年後、この村の者が近村の酒屋で飲んでいると、夜の初めごろに見慣れない女が酒を買いに来て、よく見るとあの娘だった。あまりに奇怪なので声もかけられず、女が出て行った後すぐ潜り戸を開けて跡をつけようとしたが、もう影も見えず足音も聞こえなかった。怪物が庇の上にいて女を引き上げて帰ったのだろうという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪談義(柳田國男選集 五巻)(柳田國男・柳田國男・妖怪学・1956年(昭和31年))
『妖怪談義(柳田國男選集 五巻)』は、柳田國男が妖怪についての論考を集め、昭和三十一年に自序を付して編んだ論集である。妖怪と幽霊の別を説く総論「妖怪談義」に始まり、川童・小豆洗い・ザシキワラシ・山姥・山男・大太法師・一つ目小僧・天狗などを、各地の言い伝えと方言の呼び名から考える。巻末に全国の妖怪の名を短い説明つきで集めた「妖怪名彙」を置き、大藤時彦の解説を付している。