赤岩の湯本家に伝わる河童の秘薬命宝散
どんな伝承か
群馬県吾妻渓谷の六合村赤岩に三百年ほど前から住み、代々医者と儒者を兼ねてきた湯本家には一子相伝の秘薬があり、その製法は先祖が河童の腕と引き換えに授かったものだという。ある時、先祖の医者が馬に乗って須川沿いの道を帰ってくると、このあたりに住む河童が馬を引き込もうとして、尾をつかんで自分の腕に巻きつけ、踏ん張って引いた。医者は人々の難儀を除こうと刀を抜いてその腕を斬り落とした。河童は詫びを重ね、腕を返してくれれば秘薬の製法を教えると言うので返してやった。その薬が上州一円に名高い命宝散だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。