竜の化身が残したウロコの小箱
どんな伝承か
下山口新田の厳島社、通称山口弁天の起こりは次のように語られる。夏の午後、千住から空馬を引いて戻る馬子が西新井宿のあたりで、疲れて歩く旅姿の美女に出会い、頼まれて木曽呂橋まで馬に乗せた。女は礼に桐の小箱を渡し、決して開けるなと言い残して見沼代用水の向こうへ消えた。箱を受け取った主家は幸運続きで栄えたが、好奇心に負けた主人が開けると、中には小判ほどのウロコが一枚あるだけだった。それから家は不幸に見舞われ、見沼一帯も風雨に苦しんだ。村人は女を竜の化身と考え、女が消えたあたりに竜神を祭ると、災いはやみ豊作が続いたという。
原典より
中には、小判大のウロコ一枚が入っていただけであった。—— 浦和市史 民俗編――伝説(浦和市(編)・浦和市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
浦和市史 民俗編――伝説(浦和市(編)・浦和市史)
『浦和市史 民俗編――伝説』は、浦和市史の民俗編のうち、第十章「伝説」を収めた部分である。調神社の片目の鯉や兎を飼わない言い伝え、日蓮上人の駒つなぎのケヤキ、見沼の竜神や笛、別所沼の大蛇、地名や塚の由来、特定の作物や弓矢を忌む家の言い伝えなど、市内に伝わる伝説を集める。旧市部から西浦和まで地区別に節を立て、見沼の伝説は一節にまとめ、章の初めに『埼玉県伝説集成』などの引用文献を掲げ、話のあとに▽印で異説や由来を補う。